中計(ちゅうけい)と事業成長戦略



■先週は、ご紹介からの面談で池袋に行きました。
池袋は月1回以上、定期的に訪れている駅です。
いつもは、点から点の移動で通り過ぎていますが


今回は、時間があったので、西口周辺を散策して
みました。



■池袋西口といえば、「マルイはみんな駅のソバ」
のキャッチコピーで、東京都心部のターミナル駅
近くを中心に店舗を展開するマルイの店舗が
ありましたが、そこは高層ビルが建設中でした。


マルイ池袋店の撤退は知っていましたが、今回
気になって調べ、考えたことを共有します。





■マルイ池袋店は、1977年から44年間営業
していましたが、2021年に閉店しています。


その理由は、いくつかありますが、最大の要因は
売上高が全盛期の2割程度まで落ち込んだことに
よるものです。





■マルイグループ(以下、同社)が、投資家に
向けて公開している


IR(あいあーる インベスター・リレーションズ)
情報の主に有価証券報告書と中期経営計画から、
経営に対する基本的考え方と、業績の関係について
考えてみます。





■2021年に旗艦店ともいえる池袋店を
閉店している同社の2017年~2024年の業績は、


取扱高は、1兆9千3百億円から
4兆4千8百億円と232%増大。


営業利益は、313億円から
410億円と131%の進展。

と堅調な成長を維持しています。







■同社はこの間、以下の店舗も閉店・休業しています。

水戸店(2018年)

川越店(2019年)

全店休業(2020年 コロナ禍)

京都店(2020年)

静岡店(2021年)


これだけ多くの店舗を閉店・休業しながら業績を
伸ばし続けているのは下のグラフが示すように、
事業構造を変化させてきたからです。






■フィンテック事業とは、

エポスカードというクレジットカードを中心
とした決済サービスと


同社のグループ会社であるtsumiki証券が提供
するつみたてNISA対象の投資信託サービスに
大別されます。





■これは、祖業である小売事業として顧客の
支払いの利便性を追求して、1970年代から
発行している自社独自のマルイカードを基点に
発展させている事業です。


「支払う」「借りる」だけでなく、
「貯める」「増やす」「応援する」「貸す」
「備える」など多様な金融サービスを提供する
ことで事業機会を創出し続けています。


現在、このフィンテック事業が、同社営業利益の
約75%を稼ぎ出しています。





■これはご想像のように、中長期視点で事業構造
を再構築するという、明確な意思が経営陣に
あったことが起点にあります。


下の資料は、2014年5月に発表された同社の
中期経営計画(以下 中計)で、2014年から
2017年の3カ年の中計骨子です。


この時点で、小売業についてはWEB通販への
シフトと、成長軌道にあるフィンテック事業で
あるカード事業のさらなる拡大を図ることが
明示されています。



(出所:同社IR資料)


この中計には、詳細な数値目標と行動計画があり、
それを基(ベース)にして、単年度の経営計画が
策定されているのです。





■このように内外環境が、従来とくらべて速く、
大きく変化する中で、中計の策定は、経営の
確かさを担保する有効な道具になります。


年商10億円が射程圏内に入った会社、もしくは
それ以上の規模の会社は、中計策定を検討して
みることをおすすめします。





■たとえば、現在

年商10億円 営業利益1千万円の会社が、
年商20億円 営業利益1億円の会社に


成長させたいと思うと、

簡単ではないな~

あるいは、難しいと

ムリと感じがちですが


3年間の中計で、年度目標として

売上高成長率を115%(年)
営業利益率を1%改善(年)
におくと、3年後の業績目標は


年商15.2億円 営業利益6千80万円となり、
年商20億円 営業利益1億円の
背中が見えてくるのです。


中計については、本欄では書ききれないので
次週分で続きを共有させていただきます。



以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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「どうにかなる」という考えではなく、
「どうなるか」を研究し、
「どうするか」の計画を立てて実行することだ

鹿島守之助(実業家 1896~1975年)
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「何のために」



■先週末は、友人3人と熊野古道(和歌山県)を
巡ってきました。


熊野古道というと、長い距離を歩いたように
思われますが、移動はもっぱら車で、
歩くのは参拝する際に階段を登るくらいで、
1日一万歩程度と普段と変わらぬものでした。


古くから、巡礼者や修験道者が歩いたこの地。
アクセスの難しさもあり、千年前と変わらぬ
自然と精妙な空氣が満ち満ちていました。


和歌山県に泊まるのは、新卒で入社した会社を
辞めた後、2週間かけて国内を旅した時以来
でしたが、もう一度訪れたい豊かな場所でした。



■仕事柄、経営者はじめ新入社員や学生さんなど、
さまざまな人たちと触れ合うことがあります。


その方たちの中で、「何のために」、


つまり「目的」を明確にして生きている方は、
そう多くありません。


否、極めて少なく、死ぬまで「目的」を持たず、
なんとなく生きている…。


そんな方がいらっしゃることが
とても、もったいないことだと思っています。





■ご本人からすると、一所懸命生きているし
日々、生活のためそれどころではないという
お気持ちもわかります。


しかし、筆者のつたない経験などから

人の可能性はそんなもんではない

と確信をもってお伝えしています。


それは人生でめぐり逢った多くの方々から
学ばせていただき、「目的」をもつことで、
非常に大きな力を得ていると実感しているからに
ほかなりません。





■人生経験の少ない学生さんや、新入社員さん
であれば、これから…、とも思います。


しかし、経営者や幹部が、「目的」を明確に
して生きていなければ、


ともに働く仲間や後輩にいい影響を及ぼすことが
難しくなってきます。


そして何よりも、せっかく授かった命の可能性を
花開せることなく人生を終えていくのです。





■会社の場合、「目的」は経営理念になります。


百年以上続く老舗企業は例外なく「家訓」などの
かたちでこれを大切に守り、伝え続けていること
が、会社の土台となり、発展の背骨となっています。


一方、多くの会社では、経営理念がおざなりに
なっている現状のように感じています。


経営理念やクレドはあるが、掲げているだけ、
作りっぱなしになっていないでしょうか。





■話を戻すと、「何のために」、
つまり「目的」を明確にすることで、


個人も法人(会社)も、その可能性を発揮する
大きな原動力になるのです。


そして、その「目的」は、作ったときが始まりで
そこから日々、確認と実践を繰り返していく…。



この勉強は何のため

この掃除は何のため

この作業は何のため

この会議は何のため

この試練は何のため…。



それら一つ一つが大いなる「目的」に
つながっていると実感するとき、
与えられた人生の豊かさを実感できる
のではないでしょうか。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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目的を持たない人生は、
航海をしない船のようなものだ

セネカ(哲学者 紀元前1年頃 ~65年)
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日常を見直してみる



■先週は、月曜日~木曜日3泊4日の出張でした。
定宿として、毎月利用するホテルがあるのですが
今回は、そのホテルの経営について感じたことを
共有します。


そのホテルは、サウナと温浴施設があり
朝6時から夜11時まで営業しています。


受付にはスタッフが2名いるのですが
そこを自動化(無人化)したらいいのにな~、
という話です。





■同様の設備をもつ新興ホテルチェーンは
自動化(無人化)していますし、都内の温浴施設
でも、受付~会計まで自動化しているところも
少なくありません。



定宿にしているホテルの受付人員のコストを試算
すると

17時間(営業時間)×2人×2,000円×30日

=204万円/月となります。


さらに人による接遇のバラツキがあり
筆者の人間性の未熟さもあり、正直、
ストレスを感じることもあります。





■では何故、そのホテルは自動化(無人化)
しないのか?


何故、自動化(無人化)の前に受付2名体制を
1名にしないのか?


いろいろな理由があるとおもいますが、


「経営幹部の業績に対する認識が甘い!」


ことに尽きるのではないでしょうか。





■社長をはじめとする経営幹部が、週次や月次の
損益計算書を読み込み、どうしたら売上を最大に、
経費を最小にできるかを真剣に考えぬいていると


現場に行った際に、多くの気づきが得られるもの
です。





■逆に、社長をはじめとする経営幹部が利益追求
には貪欲だが、現場に足を運んでいないと


お客様や社員さんたちに不利益で、的外れの施策
を打ち、短期では利益を得るものの、スグにお客
様離れ、社員さん離れを起こしてしまい、業績は
悪化します。





■受付業務の自動化(無人化)については
筆者の関係する音楽教室を運営する会社で、


コロナ禍の前に、受付係の人員確保を話し合って
いる際に、出てきた策の一つでした。


その会社では、受付の自動化(無人化)を
極めて短期間で、経営者が一人で実現しており、
人員確保にかんする課題から開放された上に、
経費削減につなげています。




■2024年3月期の決算発表で
売上高45兆円、営業利益5.4兆円のトヨタ自動車。


ご存じの方も多いと思いますが、トヨタ自動車の
大きな業績は、小さなカイゼン活動の積み重ね
であり、それは、現場現物にその答えを見つける
実践の継続にあります。


そうです、薄紙一枚一枚を積み重ねた、
地道な努力の成果なのです。


それらを簡潔にまとめたものが
「トヨタウェイ2001」です。


最新では「トヨタウェイ2020」がありますが
洗練されているので
ここでは、「トヨタウェイ2001」を共有します。


(出所:トヨタ自動車)




■上記、改善については、
常に進化、革新を追求する
絶え間なく改善に取り組む
カイゼン活動を日常的に行う
「4つの革新活動」(現場→設備→製品→事業)を展開する


また、現地現物については
現場に赴き、実物を見て本質を見極める
事実を徹底的に確認する
素早く合意、決断し、全力で実行する
早期に課題を把握し、真因を追及する


それらを実践する実践的アプローチについて
「なぜ?なぜ?を5回繰り返す」
手法を用いて問題の根本原因を追求する
P-D-C-Aの管理サイクルを回す
標準化、標準作業を行い、常に見直しと改善を図る


と解説されています。


当たり前だと思っている私たちの考え方や、
やり方を、今一度、見直してみたいものです。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。



日々是新 春木清隆

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人間のやったことは、
人間がまだやれることの
100分の1にすぎない。

豊田佐吉(トヨタグループ創始者 1867~ 1930年)
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「強み」を活かす



■今週の日曜日、昨年に続き
しまだ大井川マラソンinリバティに
参加してきました。


秋空の下、川幅100mを超えるゆったりした
大井川の流れや、河原のススキ、遠くの山々を
眺めながら汗をかき、爽やかな秋を満喫しました。


走り終わり、一緒に参加した友人と、サウナ&
温泉~居酒屋と、お楽しみコースで、充実した
休日となりました。





■その前日の土曜日は、今年4月から始まった
「キャリア開発研修」。


7回目となる今回、その内容の一部は、参加者の
「強み」について共に学びました。



業務上で「強み」を活かした事例発表を通じて
他の参加者からのフィードバック、各人の内省
などから、


これからの人生で、「強み」を活かすことの
大切さを実感してもらえたと思います。





■「強み」を活かすことは、自身の成長はじめ、
部下育成に関しても、20代の頃から意識して
行っていました。


それは幼少の頃から、人からコントロールされ、
指示されることが、好きではない性格にも起因
していると思います。





■よって部下には、ルール違反や、他者への迷惑
になる言動は厳然と指導しますが、基本的には
部下の長所を見つけ、それを徹底的に伸ばす
姿勢で接してきました。


すなわち、
「短所是正」ではなく「長所伸展」です。


その成果は、ご本人の努力と才能が第一ですが、
直属の部下だった人、複数名が、上場企業社長に
就任はじめ、各社の幹部として活躍していること
です。





■このように、「強み」を活かすことが得意な
特性は、後になって


ストレングスファインダーを利用し、
自身の「強み」を認識たことで
「なるほど!」と思いました。


ストレングスファインダーとは、
米国ギャラップ社の開発したオンライン
「才能診断」ツールで、Webサイト上で177個の
質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が
導き出されます。
https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/254039/strengthsfinder.aspx


才能は34の資質に分類され、最も特徴的
(優先度の高い思考、感情、行動のパターン)
5つが診断結果として導き出されます。





■筆者の5項目は、上位から

「最上志向」

「ポジティブ」

「成長促進」

「運命思考」

「共感性」です。


「最上志向」は
強みを活かして、個人や集団の卓越性を高めて
最高レベルを目指す。
隠れた才能を見つけ出す目を持っている。


という特徴があると記述されており
過去を振り返って、そのようなことに取り組む
ことは抵抗感なくやってきたな~、と思います。





■また、「人の成長が自分の喜び」だなぁと
シミジミ思うことがありますが、


やはり他人さまですので、自分の無力さを痛感
することの方が圧倒的に多くあります。


わけても、自分の子育ては予行練習もない、
日々新たな取り組みですので試行錯誤の連続です。
子育てを通じて、自分が育ててもらった感が
強くあります。


その内容は、以前、小欄でご紹介させていただき
ました。

https://www.hibikorearata.co.jp/blog/everyday/entry-354.html


そのような経験を通じて、人を育てさせてもらう
際に、大切に思うことは、どんな状況になっても、
その人を信じて、諦めないことではないでしょうか。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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弱みを気にしない。
利用できるかぎりのあらゆる強みを
活用しなければならない。

ドラッカー(経営学者 1909~2005年)
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会社の成長は振り返りから始まる



■先週は3ヶ月に1回の歯科定期検診でした。
専門的クリーニングもしてもらったので、
口腔内がとてもスッキリした感じです。


定期検診は歯科大学病院で受診しているのですが、
会計のシクミを改善中で、支払いは全て機械が
対応していました。


以前、ユニクロを利用した際も、すべての商品に
タグがつけられていて、複数の商品が瞬時に認識
され、1点1点をバーコードで読み取ることなく、
店員さんを介さずに、きわめて短時間で会計を
終えたことを思い出し、よのなかの進化を実感
した先週でした。





■日本の会社の中の99.7%は中小企業で
あることは、本欄で何度かお伝えしています。


では、私たち中小企業の従業員規模別内訳は
どうなっているのでしょう?





■下表は、令和3年度経済センサスから筆者が
作成したものです。


これをみますと

従業員10人以下の会社が全体の75%超を
占めています。


おなじく
10~19人が12.6%

20~29人が4.6%

30~49人が3.3%

50~99人が2.1%

100~199人が0.8%


200人以上で0.5%となっていて、規模が
大きくなるほどその数が少なくなっています。










■会社が成長するための課題は、
そのステージによって変わってきます。


一般的に従業員10人以下の会社の課題は
限られた商圏や業種の中で、競争相手と比較して
お客様にとって魅力的な商品とサービスを提供し
続けることが、重要かつ優先になります。





■では、全体の25%を占める従業員10人以上の
会社が成長するための重点課題は何かというと


・商品とサービスを磨き上げつつ

・人財の確保と育成

・業務プロセスの標準化

・資金調達などなど、

会社によってまったく違ってきます。


が、共通している課題は、
経営計画の策定と振り返りの徹底です。





■中小企業で経営計画を策定している会社の
割合は57.3%です。
(経済産業省 令和元年度中小企業支援機関の在り方に関する調査)


しかし、経営計画を策定している会社で、
その振り返りをしっかりとやっている会社は
どれくらいでしょう?




筆者の実感では3%未満です。
それは先ほどご紹介した従業員100人以上の
会社が1.5%とも近い数字です。





■経営計画を、月次、もしくは週次で
個人・部門・全社の振り返りと
修正を行うことによって、
会社の成長に著しい向上が期待できます。


それは、期首に立てた経営計画の目標や予算と
実績の差異を確認することで、会社の課題が
明らかになり、打つ手が明確になるからです。





■多くの会社では、月次定例会議で振り返りを
されていると思いますが、世の中の進化などと
同じように変化・進化しているでしょうか?


今一度、自社の姿を見直してみたいものです。


以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。


今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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過去から学び、現在に生き、未来に希望を持つ。
大切なのは、途中で立ち止まらないことだ。

アルベルト・アインシュタイン
(理論物理学者 1879~1955年)
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