企業発展の基は正しい考え方から
3月23日、第6回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で栄えある経済産業大臣賞を受賞されたのは、サトーホールディングス株式会社さんでした。同社は創業76年、社員数4,719人、うち海外社員約60%、バーコードプリンタのシェア世界2位と日本を代表する企業ですが、同社もかつては零細・中小企業でした。
同社の成功要因の第1は、創業者である佐藤陽氏の事業に対する崇高な精神です。
同社の成長要因の第2は、竹加工機~結束機~ハンドラベラー~バーコードプリンタ~トータルソリューションと環境変化に適応し、20年ごとに主力商品を変えてきたことです。
今回の受賞を機に、以前ゼミで紹介された同社前社長の藤田東久夫氏が書かれた「たった三行で会社は変わる」を読み返してみました。本の内容は「変化と行動の経営」に挑戦し続けた藤田氏の考え方と実践の記録であり、経営者・管理者にとって非常に刺激を受ける有益な実務書です。
「たった三行」とは、全社員が毎日、経営トップに向けて送る社内の課題や提案のことです。経営者は全社員と直接コミュニケーションをとりながら変化を主導する、という考え方を具現化した仕組みが紹介されています。
再読しての気づきは、参考資料として巻末に掲載されている同社の「仕事のやり方基本要綱」でした。1978年に制定後6回の改定と条文追加がされ、現在、32箇条からなるそれは、「役員・上司は・・・」で始まるものが17箇条あり、全体の過半を占めています。一般社員に向け、訓示的に示されることが多い世間一般のものと基本的な考え方が違い、学ぶべき点が多々あります。その中からいくつかをご紹介します。
第19条
役員・上司は部下に仕事を大幅に任せるべきだが、しかし仕事の基本的な方針は最大限に明確にしておき、どの部下から見ても疑問が残っていないようにすべきである。決して軽々しく方針を変更してはならない。
第20条
役員・上司は、どんな小さな仕事でも、サトー製品を通して共同の生活している社会の人々に、強くつながっていることを部下に認識させ、使命観を持って正しい仕事をする人をつくること。
第25条
役員・上司は、部下を社会人として立派な人間に育てることを第一義と心得、かつ職業人としても有能に育てること。
第29条
役員・上司は、日常、家族に自分のやっている仕事の概略を話し、理解させ続ける習慣を作って、より一層の協力が得られるように努力すること。それを部下にも教えること。
第31条
役員・上司は、部下が言いたがっていることを進んで聞き出し、真剣な態度で話し合いを通じてお互いの理解を深めること。
第32条
役員・上司は、職制に関係なく何でも言える、自由かっ達にしてたくましい社風の育成に努力すること。遠慮なく思ったままを話し合い、全員がより良い理解を深められるように努めること。(紹介以上)
2011年、60歳で永遠の眠りにつかれた藤田氏の功績を称えるとともに同社益々の発展を祈って・・・。
今日も皆さまにとって、素晴らしい一日になりますように。
春木清隆