経営を具現化するのは、組織と人
経営を具現化するのは、組織と人
■先週の本欄で、丸井グループが成長し続ける
大きな要因に中期経営計画(以下 中計)が
あることをお伝えしました。
本欄では、策定した中計を実行する組織と人に
ついて、同社の考え方と実績を中心に情報共有
します。
■同社では、「人の成長=企業の成長」という
基本思想を有しています。
これは2005年社長に就任した青井浩氏が、
現在まで19年間、一貫して取り組んできた
テーマです。
その考え方は、業績に象徴される企業価値は、
見えない人的資本によって生み出されている
というもので、下の氷山モデルで表現しています。
(出所:同社IR資料)
■人の成長の土壌となる企業文化として
強制ではなく自主性を
やらされ感ではなく楽しさを
上意下達のマネジメントから
支援するマネジメントへ
本業と社会貢献から
本業を通じた社会課題の解決へ
業績の向上から
価値の向上へという
企業文化の転換を推し進めています。
(出所:同社IR資料)
■目指す企業文化を推進する
「鍵」となるのが「対話」です。
同社では、対話のルールとして
1, 安全な場宣言から始める
2, 特に目的を求めない
3, 結論を求めない
4, 傾聴する
5, 人の意見を受けて発言する
6, 人の意見を否定しない
7,間隔を置いて熟成させる
を設定しています。
■この「対話」にかんする考え方について、
本欄をご覧の方の企業文化や、置かれている状況に
よって、すべてうなずける会社は少ないと思ます。
一方、働く人の過半が平成生まれの社員さんたち
であることなどを考えると、
同社の採っている「対話」を軸とした仕事の
ススメ方に徐々にでも舵取りしていくことが
生き残るための、企業文化醸成の方向である
とも考えます。
■このように企業文化を意図的につくり上げて
いった結果の一つが、下の写真です。
(出所:同社IR資料)
上の写真は、
2008年当時の中期経営推進会議です。
ご覧の通り、黒っぽいスーツをきたおじさん
ばかりです。
そして、下の写真は現在の同会議の様子です。
男性だけでなく女性も、ベテランも若手も参加
しています。
■この変化は、中期経営推進会議への参加者を
希望する人に手を挙げてもらい、その人達だけを
招いて会議を開催するという、単純なことでした。
毎月1回、年間12回開催されるこの会議。
毎回1,000人近くが手を挙げて、その中から
論文審査を通過した約300名が参加します。
この会議体の招集方法の変化によって、
会議に活気が生まれ、内用も見違えるほど
充実してきたと報告されています。
■同社では教育研修費はじめ、
ご紹介した中期経営推進会議への参加などを
「人的資本投資」として計画的にマネジして
います。
「人的資本投資」には、プロジェクト参加費や
新規事業人件費、職種変更1年目なども計上され
総人件費の35%をそれに充てています。
■これは、従来の人件費は経費であるという
考え方から、先にご紹介した
「人の成長=企業の成長」という基本思想を
マネジメントに反映させたものです。
それは、将来的な収益に貢献する人的資本投資を
拡大することが、持続的な企業価値の向上させる
という考え方でもあります。
■その考え方を検証したものが下のグラフです。
これは、「人的資本投資」を実施した以降に創出
された新事業や新サービスである、
アニメ事業・tumiki証券・すみかえ応援クレジット
などが、もたらした粗利益額を投資リターンとして
算出したものです。
(出所:同社IR資料)
その結果、投資を開始した
3年目の2019年3月期には、収入がコストを
初めて上回り、投資に対するリターンが有効で
あることを検証しています。
さらに、2026年3月期には投資したリターン
である収入は、その5倍の見込みであることを
示しています。
■このように、よく考えられた中期経営計画を
実践するのは「人」。
よって、「人」を作ることが経営の重要事項。
この考え方は、筆者が体験と学びを通じて
「岩盤信条」になっていることで、
実際に、かかわらせて頂いている十数社は
増収増益を続けています。
また、古今東西の名経営者も以下のように
同じような考え方に至っています。
松下幸之助: "経営の神髄は人にあり。"
ジャック・ウェルチ: "人を育てることが、リーダーの最も重要な仕事だ。"
リチャード・ブランソン: "顧客を第一に考えるのではなく、従業員を第一に考えよ。"
ハワード・シュルツ: "我々の成功の秘訣は、人々を中心に据えることだ。"
サム・ウォルトン: "従業員を大切にすれば、彼らは顧客を大切にする。"
アンドリュー・カーネギー: "私の全財産を奪っても、人材さえ残してくれれば、5年以内に全てを取り戻せる。"
稲盛和夫: "経営は人なり。人をつくることが経営の根本である。"
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。
日々是新 春木清隆