『生きがいについて』【読書メモ】
『生きがいについて』【読書メモ】
■年商3億円、債務超過だった会社に入社し、
9年目の2007年、株式公開を果たしました。
その2~3年前から、
「このままでは自分はダメになる」
と感じ始めていました。
それは、仕事でかかわる人たちの、私への対応が、
肯定や称賛しかないように感じられたからです。
当時、40代の私は、子供がまだ小学校就学前で、
経済的な安泰を考えた場合、その場にとどまった
方が得策でしたが、その道を選ばずに現在に
至ります。
■困難はありましたが、当時に比べて、物心共に
はるかに豊かになっている現在の境涯・・・。
目の前の損得に惑わされずに、本当の自分の心の
声を聴いて、それに従うことの大切さを痛感して
います。
当時、力をもらった本が
『生きがいについて』です。
今から半世紀以上前に書かれたこの本を
最近改めて読み直し、そのメッセージは、
色褪せるどころか、時代を超えた識見に
溢れていたので、ここにご紹介します。
■『生きがいについて』は1966年
神谷恵美子(かみや みえこ、1914~1979年)
によって著されました。
神谷美恵子は、東京大学医学部を卒業後、精神
科医としてのキャリアを築きながら、心理学と
哲学を融合させた独自の視点で人間の心の探求を
続けた人です。
■『生きがいについて』は、生きる意味や価値を
深く考察し、精神科医としての豊富な経験と
膨大な資料を読み込み、書かれたものです。
読み進むうちに、作者が読者に対して、人生に
おける目的や、意義を見つける手助けをしようと
する深く温かいオモイが伝わってきます。
私はこの本から、希望と勇気を感じ、自己探求と
成長のための重要な指針を得ました。
困難な状況に直面した時に読むと心の支えと
なる方も多いと思います。
以下、本の中から共鳴した点などをご紹介します。
・生きがいということばは、日本語だけにある
らしい。こういうことばがあるということは、
日本人の心の生活の中で、生きる目的や意味や
価値が問題にされてきたことを示すものであろう。
・深い認識や観照や思索のためには、よろこび
よりもむしろ苦しみや悲しみの方が寄与する
ところが大きいと思われる。
・使命感に生きるひとにとっては、自己に忠実な
方向に歩いているかどうかが問題なのであって、
その目標さえ正しいと信じる方向に置かれて
いるならば、使命を果たしえなくても、
使命の途上のどこで死んでも本望であろう。
・「自己実現」と単なる「わがまま」の区別は、
生きがい感と結びつけて考えてみれば明らか
である。
・「わがまま」と言うのは、自我の周辺部にある、
末梢的な欲求に固執することで、これが満たされ
ても真の生きがい感は生まれない。
・他人の目に対して、業績をあげることや、
自尊心を保つことが、第一の問題ではなく、
何よりも自己に対して、自己を正しく実現
しているかどうか、に関係した欲求であると
思われる。
・もしこの意味で自己にもとっているならば、
外面的、対人的に、どんなに立派に見えようとも、
心の底には、やましさの意識が潜んでいて、
心の眼はーーーそしてしばしば肉体の眼までも、
自己も人生をも正視することができなくなり、
横目づかいや上目づかいをするようになる。
・どうしても苦悩を打明けるひとがいないとき
には、文章に書くと言うのも安全弁の役に立つ。
・真摯な探求と悩みなしに、ひとの心に光明を
もたらされたためしはない。
・かりに平和が続き、オートメイションが発達し、
休日がふえるならば、よほどの工夫をしない
かぎり「退屈病」が人類の中にはびこるのでは
ないだろうか。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も、皆さまにとって、
最幸の一日になりますように。
日々是新 春木清隆
―――――――――――――――――――――
死に直面した人の心を一番苦しめるものの一つは
「果たして自分の人生に意味があったか」
ということである。
神谷恵美子(精神科医 作家1914~1979年)
―――――――――――――――――――――