右腕人財の要件
右腕人財の要件
■ゴールデンウィーク開けの今週。
長く続いた行動規制も緩み、やっと以前の生活に
戻りつつあることを実感しています。
首都圏の電車やターミナル駅のマスクの着用率は、
ざっと80%で、タクシーの運転手さんに売上を
聞くとコロナ前に比べ、80%とのことでした。
■先週、顧問先の幹部の皆さまと、人財育成計画
について打ち合わせをしました。
その中で、参加されていた常務の発言の端々に
強い熱意を感じました。
この方は、非同族ですが、あらゆる業務に対して
自分事以上に熱意をもって取り組まれています。
極めて稀な方なので、次のような質問をさせて
いただきました。
『なぜ、このように自分事以上に真剣に取り組む
ことが出来るのですか?』
彼は『いやいや・・・』と謙遜されながら
『もしそうだとすると、前職での倒産体験が
あるのかもしれません・・・』と言われました。
確かに、彼は外資系大手企業の幹部として、
その会社の敗戦処理で、切ない気持ちになる
ような仕事をしていたと、話されていたことを
思い出しました。
■4月29日に2023年版 中小企業白書が、
中小企業庁からリリースされました。
その第2部 変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業
第1章 成長に向けた価値創出の実現の中に
経営者の戦略実行を支える人材として
経営者を支える右腕人材について述べられて
います。
白書では右腕人財を
「社内において経営者に続くナンバー2の立場に
あり、会社経営を行う上での悩み事が相談できる
等、経営者が厚い信頼を寄せる人材」
と定義しています。
■白書では、右腕人財の経歴を73.7%が内部で
育成した人財。26.3%が外部から確保した人財
であるという調査結果を示しています。
(出所:中小企業白書2023)
右腕人財を選定した際に重要視した要素として
1,業界経験の豊富さ
2,経営者、社員のそれぞれと円滑にやりとりするコミュニケーション能力
3,保有する知識・スキルの希少性
を上位3項目として挙げています。
(出所:中小企業白書2023)
さらに、右腕人財を育成した際の工夫・取り組み
として
1,意識的な権限委譲
2,経営陣との接点の増加
3,外部との連携・交流・相互出向の機会の提供
を上位3項目として挙げています。
(出所:中小企業白書2023)
■中小企業白書に書かれている右腕人財に関する
情報は確かにその通りだろうと思料しますが、
筆者の知見から、白書に掲げられていないが、
重要だと思われる要件を一つだけ付記します。
それは『人格』です。
『人格』が伴わないリーダーが存在する組織では、
自分の都合だけを考え、何をしても儲かればいい、
今さえよければいい、少しぐらい不正なことを
してもいい、という人が増えていきます。
そのような組織は、一時、儲かることはあっても
決して長続きすることはありません。
では、『人格』の備わった人とはどんな人でしょう?
それは、どんな状況にあっても
『素直』、『感謝』、『誠実』、『努力』、
『勇気』、『謙虚』、『公正』、『博愛』
というような価値観に基づき行動しようと
する人です。
■経営学の父といわれたピーター・ドラッカーは、
その人格のことを『真摯』と、表現し、その著書
『マネジメント 基本と原則(エッセンシャル版)』で
以下のように解説しています。
「真摯さの欠如」がある者とは
1,強みよりも弱みに目を向ける者
できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、
やがて組織の精神を低下させる。
2,何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者
仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、
やがて組織を堕落させる。
3,真摯さより頭のよさを重視する者
そのような者は人として未熟であり、
その未熟さは通常なおらない。
4,部下に脅威を感じる者
そのような者を昇進させてはならない。
そのような者は人間として弱い。
5,自らの仕事に高い基準を設定しない者
そのような者をマネジャーにすることは、
やがてマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。
このように、右腕人財について考えてみると、
冒頭でご紹介した常務は、正真正銘の右腕人財
であることを、改めて認識した次第です。
ちなみに、この常務のいる社歴70年を超える
会社は、毎年着実な成長を積み重ね、かつて
25.3%だった自己資本比率は、現在78.8%に
なっています。
以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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学ぶことのできない資質、
後天的に獲得することのできない資質、
始めから身につけなければならない資質が、
一つだけある。才能ではない。真摯さである。
ピーター・ドラッカー (1909~2005年 経営学者)
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