大切な振り返り
大切な振り返り
■先週の休日、劇場に行き、映画
『エブリシング・エブリウェア・オールアトワンス』
を観てきました。
ネタバレになるので詳細は省きますが、アメリカ
で、コインランドリーを営む中国系一家が、現実
世界と異次元の世界を行き来するSF映画です。
物語は、アクション・冒険を展開しながら、
ホーキング博士の『宇宙の理論』や家族愛など
哲学的なテーマに触れるので、観る人によって
様々なメッセージを感じ取ることでしょう。
個人的には、娯楽映画として単純に楽しみ
「人は心のありかた一つで決まる」
「どんな世でも、人が人を思う気持ちが大切」を
改めて感じました。
■4月、新年度に入り、小欄をお読みの方の
会社の多くは、新たな経営計画の実践に入られた
のこと思います。中小企業で経営計画を立てて
いる会社は、小規模事業者で約5割、
中規模事業者で約7割となっています。
(中小企業庁HP 2020年度版 小規模企業白書)
経営計画を作る目的は会社の成長です。
登山でいうと経営計画を作るまでは登山の前。
現実の経営は、経営計画を作ってからが本番で、
本番でのキーワードはマネジメントサイクルです。
すなわち、Plan・Do・Check&Action、PDCA
の徹底です。
しかし実際は、経営計画をお持ちの会社でも、
計画を作ることや発表会には注力しますが、
PDCAのCheck&Action に相当する、
振り返りと修正を定期的かつ適切に出来ている
会社は極めて少ないのではないでしょうか。
■月次、もしくは週次で、個人・部門・全社の
振り返りと修正を行うことで会社の業績に
著しい向上が期待できます。
それは、期首に立てた経営計画の目標や予算と
実績の差異を確認することで、経営幹部はじめ
社員さんの考える習慣が確立するからです。
考える習慣ができることで、社員さんが成長します。
会社の成長の源泉は、社員さん一人ひとりの成長
ですから、社内において、振り返りは非常に
重要度の高い業務になります。
■「考える」習慣を根付かせるためにリーダーが
すべきことは、適切な質問をすることです。
以下に業績の好調時と不調時にリーダーが発する
代表的な質問を列挙します。
<業績好調時>
1. 新たな市場進出の可能性はありますか?
2. 市場競争力を高めるためには、どのような方法が考えられますか?
3. どのような新しい商品・サービスを開発する予定がありますか?
4. 顧客満足度を向上させるために、どのような取り組みを行うことができますか?
5. 海外市場での販売拡大に向けて、どのような戦略が必要ですか?
6. 製品やサービスの品質向上のためには、どのような手法が有効ですか?
7. 経費削減策には、どのような方法が考えられますか?
8. どのような人財育成や採用戦略が必要ですか?
9. 顧客ニーズに合わせた商品開発のためには、どのような調査が必要ですか?
10. 業績好調の背景にある要因を分析し、今後の戦略に反映させるために、どのようなアプローチが有効でしょうか?
<業績低調時>
1. 当社の業績が低迷している原因は何だと思いますか?
2. 業績の回復に向けて、何か対処すべき問題はありますか?
3. 当社の製品やサービスに対して、改善が必要とされている点は何だと思われますか?
4. 顧客満足度を向上させるために、今後何を実行していくべきでしょうか?
5. 当社の売上が低迷している原因を分析し、改善するための解決策を提案してください。
6. 新たな市場や顧客層を獲得するために、どのような戦略が必要なのでしょうか?
7. コスト削減については、どのような対処が考えられますか?
8. 競合の対立と差別化を鮮明にするために、我々は何を実行するべきだと思われますか?
9. 組織体制について、どのような改善が必要だと思いますか?
10. 業績不振の原因を明確にし、今後の戦略に反映させるために、どのような分析が必要だと考えますか?
■また、マネジメントサイクルをしっかりと
実践することで、次年度以降の経営計画書の
精度が高まってまいります。
毎週・毎月、全社で振り返りを行うことで、
計画立案段階でのヨミの甘さや、違う視点
での気づきが認識できます。
よって、次年度以降の予算と実績の差異、
すなわち予実差異が小さくなってまいります。
■予実差異といえば、上場企業の場合、売上高に
ついては、プラスマイナス10%。
営業利益・経常利益または当期純利益については、
プラスマイナス30%の発生が予想される場合、
公表が義務付けられています。
公表内容は、修正となった理由、公表された直近の
予想値と新たに算出した予想値の変動幅および
変動率などです。
筆者は、上場企業の管理部門の統括責任者の経験
から、中小企業と上場企業の大きな差の一つに
このマネジメントサイクルの徹底度合いがあると
感じています。
予算や目標が着実に達成できる、強い足腰をもつ、
会社作りの要諦の一つが、質の高い質問による
PDCAの徹底です。
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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失敗の原因を素直に認識し、
『これは非常にいい体験だった。尊い教訓になった』
というところまで心を開く人は、
後日進歩し成長する人だと思います。
松下幸之助(実業家/1894~1989年)
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