成長戦略を考える
成長戦略を考える
■今週の月曜日、10年以上前から関係している
会社の、4月からの経営計画策定に先立ち、役員
の皆さんと共に、組織と人事の検討をしました。
この会社では、関わり始めた当初から着手した
新卒採用で入社した人たちが、10年以上の社歴
となり、立派な中核人財として成長し、組織を
編成する際に、不可欠の人財になっています。
経営における長期視点の大切さを再認識しました。
定年を70歳とすると、この30歳前後となった、
新卒入社の人たちは、あと約40年、働き続ける
ことになります。
今回は、社員さんたちが安心して働き続ける
会社にするための、中小企業の成長戦略について、
情報共有します。
■給与が30万円の社員さんが100人いる場合
労働分配率を50%とすると、ひと月の必要粗利
益は6,000万円になります。(下表)
本欄をご覧の経営者は少しでも多くの報酬を
出したいと思っていらっしゃる方々ですし、
これからの求人難を乗り越えていくためにも
高待遇は必須要件です。
■この高待遇の原資となるのが粗利益です。
粗利益増大の観点から、現状を打破し、生産性を
向上させるためには、ビジネスモデルと戦略の
再構築が有効です。
本欄では数ある戦略の中から、中小企業と
親和性の高い「競争しない戦略」について解説
します。
「競争しない戦略」とは、以前の小欄でも
ご紹介した孫氏の兵法にある『戦わずして勝つ』
を下敷きとしています。
競争状態のデメリットとして
・顧客志向から競争志向に陥る
・必要以上の価格の下落が生じる
・組織が疲弊する、などがあげられます。
よって、わたしたち中小企業は、競争しない
戦略を採ることで生き残り、発展する可能性が
高まるのです。
■競争しない戦略は、ニッチ戦略と、棲み分け
戦略に大きく2分されますが、本欄ではニッチ
戦略の概念と3社の事例を共有します。
ニッチ戦略は独自化をめざす戦略です。
独自化とはオンリーワンの存在になることです。
オンリーワンになることで、競争状態から離れ
現状より高粗利益を獲得することが可能になるのです。
ニッチ戦略は、質的コントロールと量的コント
ロールの2つの側面からなり、それらの組み
合わせを整理すると下図のようになります。
① 技術ニッチ
文字通り、技術のニッチを極めることを目指す戦略です。
医療機器の開発、製造、販売を行うマニー株式会社は、
世界一の品質を提供することをニッチ戦略の
キモとしています。同社はHPに以下のような
メッセージを掲げています。
トレードオフ(やらないこと)
以下のトレードオフを明確にして、戦略立案の基準にしております。
(1)医療機器以外扱わない
(2)世界一の品質以外は目指さない
(3)製品寿命の短い製品は扱わない
(4)ニッチ市場(年間世界市場 5,000億円程度以下)以外に参入しない
上記のトレードオフを守ることで、長期的な安定成長を目指しております。
③ 空間(立地)ニッチ
愛知県豊橋市にヤマサちくわという会社があります。
愛知県ではおなじみのちくわの製造、販売会社です。
この会社がニッチ戦略で掲げている言葉は
『比叡山と箱根の山は越えない』です。
以前はこのエリア以外でも販売していましたが
現在はこのエリアで限定して販売しています。
その理由は、地域限定販売にすることで、
値段交渉のないおみやげ需要や、指名買いとなり、
高い利益率を維持しているのです。
⑦カスタマイズニッチ
腕時計は1,000円前後から数千万円まで、
極めて価格帯の幅の広い商品です。
株式会社Knotという腕時計の製造、販売業の
会社があります。
2014年、吉祥寺の小さなマンションの一室で
創業したこの会社は、数ある時計市場の中で
「カスタマイズウォッチ」といわれる独自性の
高い領域に集中することで世界中から顧客を
集めています。
以上、3社の事例を、ご紹介をしましたが、
ニッチ戦略とは、非価格競争戦略でもあります。
価格以外で、自社の独自性を追求することは
根気と手間ヒマがかかりますが、長期視点で
会社を発展させるための有効な一手と思料します。
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
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何を行うかを決めるのと同様に
何をやらないかを決めるのが戦略である。
マイケル・ポーター (経営学者 1947年~)
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