全員参画経営で経営者をつくる
全員参画経営で経営者をつくる
■1940年、竹材加工機の製造で創業した
埼玉県の会社が、80年以上経た現在も成長し
続けています。
この会社の採っている施策が、私たち中小企業
でも大いに参考になりそうですので、情報共有
します。
会社名は、サトーホールディングス。
梱包機や値札をつけるハンドラベラーや
バーコードプリンタの製造から、現在はITを
活用し、モノの動きの管理、現場データの
収集など、顧客の課題解決に取り組んでいます。
■この会社の有力な成長ドライバーの一つが
「三行提報」です。
これは、全社員が毎日、お客さまの声を現場から
集め、会社を良くするための提案として経営者に
提出する制度です。
この制度は、1976年から始められ、最初は
手書きでしたが、今はシステムに100~150字
で文章を登録します。
毎日約2,000通入力される提報を、秘書部など
で、約15通に絞って社長に提出します。
社長はそのすべてにコメントし、それが提案者や
提案対象となった部署の役員や部長などに共有
されます。
(出所:サトーホールディングスHP)
■三行提報の効能を列挙すると
・トップの耳に心地よくない情報も入る
・現場の率直な意見を把握
・製品改善、開発
・問題の早期発見
・社員のモチベーションアップなどがあります。
■また、三行提報は「あれがほしい」
「こうしてほしい」と要求を「言いっ放し」
ではなく、「こうしたらいいのでは」という
自分なりの解決策まで書くのがルールです。
このため、社員はただ気づくだけでなく
「自分はどうしたいのか」を考える意識を
常に持つようにもなります。
さらに、社員は毎日三行提報の「ネタ」を
探しているので、製品に対する取引先の
小さな意見や、職場での使い勝手の悪さなどを
見逃さなくなり、それに対する問題意識を
持つようにもなります。
■かつて、この会社の経営者だった藤田東久夫
(ふじたとくお)氏は同社のHPで以下のよう
に語っています。
『私はCEOになって、社員と三行提報のやり取りをすることで創造的判断力を養ってきました。三行提報はトップ(リーダー)を育てるシステムではないかと思っています。儲かればいいやとか、売上が増えればいいやという基準だけでなく、その判断は社会的価値に見合うかどうかの判断力も、社員が現場で耳にした情報や知識をもとに養ってきました。社員ひとりひとりの声に耳を傾け、すべきことをひるまずに実行していく。その反復の中から企業全体をとりまく環境の変化をつかみ直しては、成長への軌道を模索していくのです。』
『バブルが崩壊した時は、(中略)いろいろな経営者や先達を見ていても倒産しているし、世の中で良いとされてきたことが、何もかも信じられなくなっていました。その時に頼るものがないので、「取りあえず毎日社員から三行あがってくるので、これに応えていこう」と。何か会社を動かさなければいけないと思った時に三行にすがりついてアクションをしていきました。ただ、いま考えると「何をやってきたのか?」と言われると変化を起こしてきただけで、成功するもしないもアイデアはたいしたことがありません。三行からヒントを得て日々小さな変化を起こして来たに過ぎません。
■筆者の周囲でも、この三行提報を参考にした
施策を実施して数年経た会社が複数ありますが
それぞれの会社で確かな手応えを感じています。
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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情報の目的は知識ではない。正しい行動である。
(ピーター・ドラッカー 1909~2005年 経営学者 )
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