表層的課題と本質的課題
表層的課題と本質的課題
■先週の木曜日(9月15日)の 日経新聞に
『貿易赤字が過去最大2兆8173億円』
の見出しで、記事が載っていました。
その原因は、円安とエネルギーの高騰によるもの
と解説されていました。
気になって調べてみると、1950年以降、
日本の貿易収支は、下のグラフのような状況
でした。
ここから読み取れることは、
過去、日本の貿易収支は、1981年~2010年の
29年間は連続黒字で、その他の期間は
概ね赤字である。ということです。
■筆者は、貿易収支の赤字化は、
今後、継続すると予測します。
なぜなら、今回の貿易赤字の原因の一つが
円安であるとされています。
しかし、ご存じの方も多いと思いますが、
1985年プラザ合意より、国際通貨制度に
関する制度が導入されました。
その頃の円は1ドル200円台で、現在と比べても
円安です。一方、それ以降も、貿易収支は黒字を
続けています。
■筆者が、赤字化継続を予測するのは、
赤字の本質的課題が、日本に輸出すべき品目が
少なくなっている点にあることです。
1980年代、日本は、コンピュータ、半導体、
工作機械、家庭用電化製品、自動車その他の
運送機器の輸出が急速に進展しました。
また、円高のもと、価格競争力の維持を図る
多くの会社が、労働集約的で技術的に単純な
部品や製品の生産拠点を、中国やその他の
アジア諸国に移しました。
貿易収支を企業間取引に置き換えて表現すると、
現在の日本では、他国にとって買いたいと思える
魅力的な商品(製品)が、圧倒的に少ないことが
本質的課題です。
■本質的課題の反対語は、表層的課題です。
企業経営でいうと、例えば、売上や利益の
減少が、一過性の、いつか元にもどる表層的課題
なのか、いつまで経っても戻らない本質的課題
なのか、見極めが重要です。
この2つの課題への対処は、当然のごとく
異なります。
すなわち、表層的課題に対しては、待つことを
含めた一時的対策を講じ、本質的課題には、
構造的対策を打つことです。
■経営において、大切なことは、
本質的課題に対して、構造的対策を講じる
ことです。
ここでのポイントは、
『当社にとって、本質的課題は何か?』を
見極めることです。
■筆者の体験と研究から、中小企業経営における
『本質的課題』は概ね8項目に集約され
拙著の中で、経営診断から導き出される
8つの打ち手として紹介しています。
■8つの打ち手は、その重要度順に全ての礎となる
①経営者。
ここでは、次世代リーダーを含めた事業継承者と
次世代マネジメントチームの組成と育成も含みます。
次に高収益企業の必須要件として、
②経営計画 ③月次決算 ④独自技術・商品・サービス
⑤人財の採用と育成。
さらに継続的発展のための要件として
⑥社外資源の利活用 ⑦人財の活性化
⑧継続的未来投資があります。
■表層的課題と本質的課題。
日本の貿易収支についての本質的課題追求は、
専門家にお任せするとして、
私たちは、
『自社の本質的課題は何か?』
『その解決策は何か?』について、
今一度、立ち止まり、計画的、継続的に
取り組む必要があるように感じた次第です。
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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私たちは無知によって道に迷うことはない。
自分が知っていると信じることによって迷うのだ。
ジャック・ルソー
(哲学者・政治学者 1712~1778年)
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