リーダーと組織風土
リーダーと組織風土
■先日、かかわっている会社の取締役会
でのことです。
一人の役員から、自部門一般職の方を
ランク(号俸)アップしたい旨の提案が
ありました。
慣例では、昇格してもおかしくない
事案だが、諸般の事情を勘案し、
昇給を諮る、という内容でした。
これに対し、一人の役員が異をとなえ
議論がなされました。
■参加者はオーナー社長ほか
非同族の役員4名の計5名。
議論は、主に提案者と反対者で
展開されました。
■このような場面では、提案者との
人間関係を損ねたくない、
場の空気を悪くしたくない、などの
心理が働き、多少の違和感があっても
そのまま通過することが多いように思います。
■しかし、今回は一人の役員が異をとなえ
真剣な議論がなされました。
議論している2人に、私利私欲がないことは
言うに及ばず、自部門だけをみた、部分最適の
思考もなく、全社的な視野で、全体最適を考えた
発言が2人に共通したもので、役員として的確な
動機から、議論がなされたと思料します。
ちなみにこの事案は、社長判断で、全社の
考課者会議を経て結論を出すことになりました。
■昨今、ハラスメントなどの言葉が
必要以上に意識され、組織としての力が
失われている会社を見聞きします。
相手の気持ちを尊重することや
人間関係を良好に保つことは大切なことですが
それにとらわれ、長期的にみた会社の活力を
損ねる思考や言動は、幹部として
思慮したいところです。
■下表は、社会心理学者の三隅二不二氏
(みすみ じゅうじ)氏が提唱した
PM理論を基にリーダーと組織状態を
図表化したものです。
これは、リーダーシップは
「P機能(Performance function:目標達成機能)」と
「M機能(Maintenance function:集団維持機能)」の
2つの能力要素で構成されているという理論をベースに
組織を「目標達成」と「集団維持」の四象限で分類し
それぞれのリーダーのタイプのもとで、
どのような組織になるかを示しました。
(リーダーシップの PM理論を参考に筆者作成)
PM型(P・M共に大きい)
仕事も人間関係も強い
学習する豊かな組織
Pm型(Pが大きく、Mが小さい)
成果はあげるが、集団をまとめる力が弱い。
過剰統制の乾いた組織
pM型(Pが小さく、Mが大きい)
集団をまとめる力はあるが、成果をあげる力が弱い。
馴れ合いの湿った組織
pm型(Pが小さく、Mも小さい)
成果をあげる力も、集団をまとめる力も弱い。
無気力な氷の組織
■さて、自社や自部門は
どの象限に当てはまるでしょうか?
■以下に理想的な組織をつくるため
リーダーとしての自己評価項目を示します。
対象は主に部門リーダーを想定しています。
〇×で評価し(△はつけません)、
リーダーとしての努力課題を見つける
一助になれば幸いです。
1. 私心少なく、全社最適と会社の長期発展を動機の言動に努めていますか?
2. 組織の内外に対して、情報を受発信していますか?
3. 自分は誠実だと思いますか?
4. 「頼りになる存在」であると、信頼されていると思いますか?
5. メンバーと同じ視線でものを見ることができますか?
6. 部下の変化に気づき、良い変化に対して褒めることができますか?
7. 「自分は人として成長する」という覚悟ができていますか?
8. メンバーへ、期待することを正しく理解させていますか?
9. 「何が正しく何が間違っているか」、「何を優先的に行うべきか」と言うようなマネジメント上の判断基準を明確に打ち出していますか?
10. メンバーから出てきた提案を積極的に採用するようにしていますか?
11. メンバーを自分と対等な人間として接していますか?
12. メンバー同士の人間関係を良好に保つように努めていますか?
13. 目標達成に向けて、強くメンバーを促すことができますか?
時に厳しさを見せることができますか?
14. メンバーの人財育成に注力していますか?
15. 相手の状況や、組織の状態に合わせて、自らのリーダーシップスタイルを変えることができますか?
今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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好かれなくても良いから、
信頼はされなければならない。
嫌われることを恐れている人に、
真のリーダーシップは取れない。
野村克也
(プロ野球選手、監督、野球評論家 / 1935~2020年)
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