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ビジネスモデルの革新と進化

ビジネスモデルの革新と進化


■8月4日の小欄で、衰退業種である百貨店の中で
黒字決算の丸井グループについてご紹介しました。
https://www.hibikorearata.co.jp/blog/everyday/entry-259.html



その中で、同社のビジネスモデルについて解説し
経営陣の努力で、従来の百貨店という業態から、
自社の強みを活かして、社会に必要とされる
新たなビジネスモデルを確立しつつあることを
確認しました。

これは、現在の丸井グループのビジネスモデルを
横軸で輪切りにして分析したものです。



■今回は同じ丸井グループを創業からの歴史という
縦軸でみることで、変化の時代にビジネスモデルを
考えるヒントになれば幸いです。


1931年~創業期のビジネスは、家具の月賦販売。
当時の家具は高額であったため、まとまった
お金がなく、家具が欲しくても一括購入することが
困難だった人たちに対して、家具を販売する時に、
同時に信用を供与しています。
つまり、お金をお貸しするという月賦販売で、
小売と金融が一体となったビジネスを行っていました。


1972年~二代目社長の時代。
高度経済成長期に国民の所得が増加し、
1980年代から耐久消費財のクレジットニーズが衰退。
他の月賦販売店が小売を捨て金融に特化する中、
伸びつつあったファッションに特化しています。
それまであまり目を向けられてこなかった若者に
信用を供与することで、小売を捨てることなく若者を
対象とし、小売・金融一体のビジネスを革新しました。


2005年~三代目社長の時代。
従来のハウスカードをVISAとの提携により
全世界で使える汎用カードであるエポスカードに
進化させ、小売・金融の一体運営はそのままに、
成長の主役は小売から金融へ。
キャッシュレス化による決済手段の多様化に応じ、
すべての人に向けた金融サービスの実現をめざし、
それまでのカード事業からフィンテック事業へと
再定義を図っています。


「フィンテック(Fintech)」とは、金融を意味する
「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する
「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた
造語です。



■以上、創業からの時間軸でビジネスモデルの
歴史をみてきました。
このビジネスモデルの変遷は、同社が過去の
大きな成功体験を全否定したことで初めて
実現できた革新と進化です。


逆の見方をすると、他の百貨店が総じて赤字決算を
続け、苦戦している主因は、数十年前のビジネス
モデルを手放せないでいるから。

別の表現をすると、衰退しているのは
変化しきれていないから。とも言えます。



■一方、同社が変わらぬものとして大切に保持~実践
しているものに創業者の言葉があります。
「信用はお客さまと共につくるもの」
「景気は自らつくるもの」は同社の変わらぬ精神として
代々の経営者にしっかりと受け継がれ
同社繁栄の基となっています。



■最後に、同社の考える企業価値について共有します。
本稿をお読みの多くの方は、企業は利益追求の
道具でないとお考えのことでしょう。


同社では、「利益かしあわせか」ではなく、
「利益もしあわせも」と考えています。


なぜなら、両者はつながっているからです。
例えば、お客さまの人生をより豊かにするための
体験を提供することでお客さまをしあわせにする
ことができれば、そのようなビジネスのLTV
(Life Time Value顧客生涯価値)は向上し、
社員の働きがいも高まります。

社員が働きがいを持って社会課題や環境問題の
解決をめざすビジネスに取り組むことができれば、
地域・社会や将来世代のしあわせにつながるだけ
でなく、共創パートナーであるお取引先さまの
利益にもつながり、ESG{環境(Environment)、
社会(Social)、ガバナンス(Governance)}の
向上を通じて株主の利益にもつながります。
と述べています。(同社HPより)




この考え方は、今後、企業が健全な状態で次世代に
バトンを渡すために、益々求められる思想となることでしょう。

なぜなら、私たちは日ごろ、商品やサービスを購入する際
あるいは、新規のお取引先と契約する際
または、家族など近しい人が就職する会社を決める際
インターネットでその対象の情報を入手し、
選択する判断材料としています。

『老子』にある、※天網恢恢疎にして漏らさず
(てんもうかいかいそにしてもらさず)
がインターネットやSNSの普及によって
現実化している、ということです。

※天網恢恢疎
天が張りめぐらした網は広く大きく、
目も粗いようだが、悪事・悪人は逃さないということ。
天の道は厳しく、悪事はすぐに露見し、
報いを受けるということ。

このように見ると、経営は善悪が判断の基準で
且つ、時流に乗ってお客さまに選ばれ続け、
同時に、企業として様々なステークホルダーとの
調和というものを図っていく必要があります。
すなわち永続企業として生きて行く責務があるのです。

今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。


日々是新 春木清隆


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過去には感謝を、
現在には信頼を、
未来には希望を

オットー・ボルノー
(ドイツの教育哲学者 1903~1991)

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