幹部の人間力
■先日、関係している会社の役員のエグゼクティブ・
コーチングを行いました。
エグゼクティブ・コーチングとは、対話をおこない、
その人の自己実現の支援をつうじて、会社発展に
資するコミュニケーション手段です。
対話をした方は、今までの人生を振り返り
「ここまでは人に恵まれ、幸せな人生です」と
仰っていました。
この方は“感謝”と“勤勉”という徳目を不断の努力で
身につけていました。
世の中を見渡すと、この方のように人として尊敬できる
幹部がいる組織は残念ながらそう多くはありません。
■「人事は隠せない」という言葉があります。
それは経営陣や幹部がどの程度有能であるかを
社員は肌で感じ取っているということです。
有能とは、単なる仕事遂行力だけではなく
人格・識見をふくめた人間力のことです。
「なるほど、あの役職はあの人が最適だ」と
納得する人事を行わなければなりません。
一方、「やはり口先だけでうまく立ち回り
弱い人に強く、強い人に弱い人が出世するんだ」
と社員が感じると、モラルは低下し、やがてみんなが
うまく立ち回ろうとするか、真に有能な人でも
腐るか、辞めていきます。
■かつて新卒で入社し、一部上場企業となった後
倒産した会社では、不健全な人事とその影響を
骨身で感じることができました。
そのような体験から、人事については
「経営判断のなかで人事ほど重要なものはない」
「人事は経営者の哲学や価値観の表出である」
と考えています。
■江戸末期の思想家で明治維新に大きな影響を
およぼした佐藤一斎の著で「重職心得箇条」
という書物があります。
この本は重職、すなわち、現在の重役あるいは
幹部にむけて書かれたものです。
■全部で17カ条からなる中から
第1条を共有します。
<第1条 解説文>
重職(重役)というのは、国でも企業でも、
大事を取り扱うことが仕事です。
そうでなければ「重」という字を冠に載せる
必要はありません。
だから軽々に行動されては宜しくないのは
言うまでもありません。
親しみを持っての行動と、軽々な行動とは
自ずと違うのものです。
社員に親しみを感じるのはいいとしても、
重職の一つの決定の誤りが、社員全員を
路頭に迷わせ、株主や取引先に迷惑を
かけるとなると、その言動は自ずと重厚で
なければならないし、威厳を伴っていな
ければなりません。
威厳は威張る為に必要なわけでは有りません。
重大な決定をするために必要なのです。
これが備わっていなければ、決定の重大さに
押しつぶされてしまうからです。
威厳は普段、何を考えているかによっても
身に付いてきます。それは“立っている処”の
差でもあります。
重職としての己の役割をわきまえ、日々それに
相応しいことを考え行動していれば、威厳は
身に付いてくるはずです。
こうした備えがなければ、自らの責任で重大な
決定はできないでしょうから、どうしても、
“会議”で決めたがるはずです。
ここまで第1条解説文。
解説文出所:https://affordd.jp/koha_hp/LectureManager/MG.Jyushoku/MG.Jyushoku0.html#anchor1347251)
以上、今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。
日々是新 春木清隆
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人を動かすには模範を示すことが大切だ。
というより、それしかない。
アルベルト・シュバイツァー
(哲学者、医者、ノーベル平和賞受賞 / 1875~1965)
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今朝(6/9)の日の出