事業を俯瞰する
事業を俯瞰する
■先週、ある地方都市で創業50年を超える企業の役員陣と
長時間の協議を行いました。
内容は事業に関する全体的な見直しです。
その協議した内容を似たような事例を使って共有します。
■下表1は今年(2020年)4月9日に公表された
株式会社 セブン&アイ・ホールディングスの決算短信の一部です。
(表1)
■下表2は、決算短信の資料から営業収益と
セグメント利益および資産を切り取り
さらに網掛け部分は、セグメント別の利益率と
ROA((総資本利益率)を追加したものです。
(表2)
■この表を観ますと、利益率、ROAともに
国内コンビニエンス ストア事業がこの会社の
中核事業であることが確認できます。
この事業はご存知のとおり、フランチャイズ展開を主
としていることもあり高収益体質を保持しています。
■また、この会社がコンビニエンス ストアを
始める際にノウハウを買い、教えを乞うた
アメリカ本家を買収した海外コンビニエンス ストア事業も
1千億円を超える利益を稼ぎ出す孝行息子になっています。
■さらに、事業開始にあたり、周囲から冷ややかに
見られたセブン銀行が展開する金融関連事業も、
利益額536億円、利益率24.7%と立派な成果を出してします。
■課題は、スーパー ストア事業と百貨店事業です。
この2つの事業部門は利益率、ROEともに低く、
世の中からの支持の度合いを示す売上高もここ数年下降傾向です。
■全社の成長をこれから10年の時間軸のメガネを
かけて俯瞰すると、この会社の強みである基本の徹底を
継続し、スーパー ストア事業と百貨店事業は縮小または撤退。
デジタルを起点として新たな価値提供にチャレンジすることが、
最適解であることは明白です。
■しかし、現実はその通りにはいきません。
この会社の場合、スーパー ストア事業は創業者や古参社員が、
産んで育てた事業であるからです。かつての成功体験とシガラミが、
精神論と混ざり合い、当たり障りのない無難な戦略に落ち着き易いのです。
■かつて、私が経営企画部長を務めていた一部上場企業がその典型でした。
役員はじめ役職者は、権力者の顔色をうかがい、
市場で生き残るための方策を提案するどころか、
思考停止状態に陥っていました。
このような考えない幹部を育てたのは権力者の責任です。
■全社を俯瞰するには、事業部門別、地域別、商品群別、
チャネル別など会社によって様々な切り口があるでしょう。
そこで得られた情報を元に「何を止めるか」を
決めることが社長の重要な役割です。
昔から
「引き際は攻める時より10倍の難易度と勇気を要する」
と言われています。
■社会と世の中の流れを洞察すること。
過去の成功体験の呪縛からのがれ、自己否定と挑戦することを、
勇気をもって宣言すること。
このような社長が率いる会社には明るい未来が拓けていくことでしょう。
日々是新 春木清隆
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過去には帽子を脱いで敬意を表し、
未来には上着を脱いで立ち向かいなさい。
クレア・ブース・ルース(米国の女性作家、外交官 / 1903~1987)
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