会社を強靭にする指標とは
会社を強靭にする指標とは
■5月20日と28日の本欄で、どのような環境変化にも
脅かされない強靭な財務体質作り(概論)について書きました。
出てきたキーワードは、無借金経営、自己資本比率、
ROA(総資本利益率)、回転差資金、
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle)です。
■今回は、理想の財務体質を描くこと(各論)について述べます。
理想の財務体質を描く際に定量目標として、自社独自の自己資本比率と
手元流動性比率を決めることをすすめています。
財務指標は数多くありますが、私は中小企業が生き残るための
エッセンスはこの2つに集約されると考えているからです。
■まず、自己資本比率{純資産/総資本(=負債+純資産)}。
この指標の上場企業平均は41%、中小企業平均は39%。
私が示す自己資本比率の指標は、50%以上の実質無借金経営です。
■もう一つの指標である手元流動性比率
{(現金 + 預金 + 短期有価証券)÷ 月商}は、
単純に言うと月商の何倍のお金を持っているか?です。
一般的な理想数値は、大企業で1カ月分強、
中堅企業で1.5カ月分、中小企業だと1.7カ月分です。
私の示す手元流動性比率の目安は3ヶ月分以上です。
この自己資本比率50%以上、月商の3ヶ月分以上の
手元流動性比率の指標をベースに、自社の商売の性質や
内外環境、ご自身の考えなどを加味して自社の目標数値を決めます。
会社の安全性を測る指標の一つに
流動比率(流動資産÷流動負債)があります。
この流動資産の中には現金および預金の他、
受取手形・売掛金、棚卸資産、有価証券、貸倒引当金などがありますが、
売掛金や棚卸資産が実態とかけ離れている事例があります。
すでにお気づきかと思いますが、
売掛金や棚卸資産を調べると、
計上されているほどの金額にならない場合があるのです。
■実際、私が在籍した会社では、1億数千万円の売掛金が、
数年にわたって決算書に計上されていました。
精査すると、1億円近い取引が回収不能、
または回収困難な取引だったのです。
回収困難取引については、その額の高い取引先順に、
何度も客先に足を運び、粘り強く回収作業を続けました。
また、回収が難しい取引に関しては、
当時、法制化されて間もない少額訴訟制度を使いました。
■少額訴訟制度とは、従来、裁判に持ち込むには、
時間の面や費用の面で見合ないので、
泣き寝入りせざるを得ない事案を、
訴訟費用を抑え、迅速に審理を行う制度です。
■煩雑な書類作成や裁判所へ数回通うなど
手間はかかりましたが、厚顔無恥な対応を
していた経営者たちから回収できた時には
労に倍する喜びを味わえました。
このコロナ禍を生き延び、より強い会社に成長させるために、
今を機会と捉え考え、行動するヒントになれば幸いです。
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最も難しいのは行動に移すという決断だ。
あとはただ続けるだけでいいのだから。
アメリア・イアハート
(1897年 - 1937年)
アメリカの女性飛行士
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日々是新 春木清隆