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海底撈(かいていろう) 知られざる外食企業の素顔【読書メモ】

海底撈(かいていろう)
知られざる外食企業の素顔【読書メモ】



■久しぶりの読書メモです。
本書は、2004年、中国の地方都市で20代の
中卒の若者、張勇(ジャンヨン)氏が、
友人たちと4卓で始めた外食企業について
書かれたものです。


火鍋という料理を売る同社は、現在、中国はじめ
シンガポール・韓国・日本・アメリカ・カナダ
イギリスなどで1000店を超える店舗を
すべて直営で展開しています。


現在、同社の時価総額は、創業20年を待たずに
世界の外食企業の中でマクドナルド、
スターバックスに次いで第3位となっています。


また。同社の経営手法は、ハーバード・ビジネス・
スクールでも取り上げられるなど、注目を集めて
おり、業種を問わず参考になる点が多々ありました。




■著者の山下純氏は、1976年生まれ。
1999年京都大学法学部卒。
同年松下電器産業( 現 パナソニック)に入社。

2017年 から 2020年 にかけて、火鍋チェーンの
海底撈グループとの協業事業の立ち上げに参画。

合弁会社を設立し、初代総経理に就任。
中国現地の現場で陣頭指揮を執り、

海底撈の創業者・経営陣などと深く交流した
経験から、同社の実態をあらわしたものです。




■元溶接工だった創業者の張勇(ジャンヨン)氏は
経営について、松下幸之助の本を繰り返し読んで
学びました。

その影響からか、同社が経営の軸にすえるのは
以下の2点です。


「どうしたらお客を喜ばすことができるか」
「従業員を大切にすること」


本書を読み、この追求の徹底が同社発展の
キモだと感じました。

以下、その概要を共有します。





■張勇(ジャンヨン)氏の打ち出した戦略は、
顧客至上を掲げて、顧客一人ひとりに合わせた
最高のサービス、至上のおもてなしの提供です。

それでは、その真の強み、付加価値が最も高い
部分以外についてはどうしていくべきか

人間がやってもロボットがやっても同じ
付加価値であれば、むしろ、ミスを起こさない
ロボットに置き換えて拡張性・安全性・正確性を
高めるという戦略が考えられるだろう、という
合理的な発想です。



■その具体的な事例は、2018年に
パナソニックと共に厨房を自動化した
「スマートレストラン」を北京市内に
オープン。

厨房のバックヤードでは、18台ものロボット
アームが、タブレット経由で入ったオーダーに
合わせて皿をトレイに並べ、ベルトコンベアに
載せ

その皿をホールロボットがピックアップし、
顧客のテーブルまで運びます。

皿には電子タグがつけられ、鮮度管理や
売れ筋の把握に活用されています。



■このように、直接、顧客と接さないバックヤード
を徹底して省人化することで、生産性を上げ、
標準化をはかり、世界が注目する『接客革命』を
実化するベースとしています。


アリババ創業者であるジャックマー氏は
海底撈のことを
「単なる外食サービス企業ではなく、
洗練された製造業・物流業でもある」と紹介した
ことからも、同社の合理化への徹底度合いが
うかがえます。



■同社が徹底しているもう1点
「従業員を大切にすること」について
共有します。


同社の福利厚生は、
店舗から歩いて通える寮完備にはじまり
1日4食の賄い、毎月両親の口座に振り
込まれる両親手当、祖父母手当、帰省手当、
子女が大学に合格したら奨学金支給など
手厚いものがあります。


しかし、同社を追従する他社が、商品や
オペレーションを表面上マネしても
本質を捉えられない、同社成長のエンジンと
なっているものが同社の〈徒弟制度〉です。




■新入社員の配属先が決まると、
ベテラン社員の1名が師父として
新入社員に紹介されます。

ベテラン社員は、海底撈の明文化された
制度や企業文化を教えるだけでなく、
自分の入社動機に始まり、店長や同僚のクセ、
顧客の好み、仕事上の技能など、さまざまな
不文律や明文化されていない智慧や、情報や
ノウハウを新入社員に教えこんでいきます。

こうして先輩社員と後輩社員が結ばれて絆が
生まれ、その店の文化のネットワークが
作り上げられていきます。

師父は、弟子の新入社員が入社した最初の
1週間だけでなく、弟子の中長期的な
キャリアに対しても定期的に指導や
サポートを行ないます。

なぜなら、担当師父は、責務を果たすことで、
しかるべき報奨金が得られる制度なので、
師父のモチベーションアップになっているのです。



■コロナ禍以前、中国・台湾・ベトナムの
人を大切にする経営を実践する会社を視察
しましたが、彼らは日本の経営をよく学び、
かつ、実践していたことを思い出しました。


今日も皆さまにとって、
素晴らしい一日になりますように。


日々是新 春木清隆

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百人までは命令で動くかもしれないが、
千人になれば頼みます、
一万人にもなれば、拝まなければ人は動かない。

松下幸之助
(日本の実業家/1894~1989年)
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